和紙という素材

豆椿さんで使う和紙のテーブルについて、前のブログでかいてますが、
その和紙についてもう少し。

ハタノさんはご自身で一枚一枚和紙を漉き、その和紙で壁や天井、建具のみだけでなく床や什器(テーブルやカウンターなどです)も仕上げられています。
数年前、ある機会にその話を聞いた時、私にとっては結構衝撃的な出来事でした。
「和紙」という素材は壁や天井、建具に貼る素材であって床や什器(テーブルも含め)などハードユースな摩耗しやすい場所には使わない(使えない)というイメージがありました。
壁や建具に使う場合も然り、汚れもつきやすいし痛みやすい。だけど手触ややわらかい表情なんかは良いので、和室など比較的上品な使いかたを前提にした場所に使う、、というかんじでした。
そして、世の中のたいていの内装工事でもそのように使われているので、「え、床?テーブル?そんなとこで使えんの?すぐ痛んじゃわない?水かかったら破れない?」と、そんな反応がかえってくるのだろうと思います。私もそうでした。

ハタノさんは、耐久性を考えて和紙をオイルでしあげたりと場所や用途に適した加工を施されています。
また完全に汚れがつかないとか全く変化しない、といった類いのものではありません。
ふだんの生活の使い方程度であれば支障がない、そういう意味で無垢の木と同じくらいの感覚で付き合える材料として、私の中でグッと和紙が身近な素材になった瞬間でした。

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(↑工房にて見せていただいた作品。)

工房でお話をお聞きして、面白い発見は色々ありました。
和紙そのものは自然のものを原料につくられています。自然素材です。
他の素材でも同じことが言えるのですが「自然素材」と聞くと健康、安全、やさしいといったイメージと結びつきがちです。
もっと乱暴ないいかたをすると、自然素材は良くて、化学的な新建材は良くないもの、そんなふうにも。
もちろん逆もあって、自然素材は汚れやすいしメンテナンスしにくい、けど新建材は変化しにくく、扱いやすい。メンテナンスもラクチン。それもひとつの側面。
ただ、そんなふうに単純に良いか悪いかの二局に分けれるものではないと思っています。

今回、テーブルを製作してもらうにあたって、和紙の下地にはシナランバーコア合板という新建材が使われています。無垢の木に比べると湿度などによる反りなどが生じにくい比較的安定した(変形しにくい)材料であり、安価な材料です。そして軽い。
和紙を貼る際の接着剤には下地との相性を考えて、ボンドを使用することもあるようです。
和紙の染め上げは天然の顔料の他に、柿渋染めもされますし、自然の土を混ぜたり、そればかりではなくケミカルな色粉をアクリル系の溶剤にまぜて使うこともあるようです。
ほんとうに、なんでも。いろいろ。
見せ方(デザイン性)、耐久性や施工性、使い方、、さまざまな条件のもと、和紙とともに使われる材料はそれに合ったものを選択されているようです。

だから色んな場所で使える、使い手ももっと気楽に付き合える。
和紙そのものがのもつ強さ、美しさ、感触、実用性、もっと自由で身近な素材なんだよとみせてもらえたようでした。

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ちなみに、上の写真は十何年も使いこまれてきたという和紙貼りテーブル。
使い込むほどに、和紙の重ねしろが表情としてあらわれています。
おそらく擦れたりして痛んだのであろう部分には和紙で継ぎ当てされていました。
(パソコンの画面だとわかりにくいと思いますが、、)
痛んだらもうダメ、ではなくてきちんと補修していけばそれがどんどんいい表情になっていく。
この使い込まれたテーブルがめちゃくちゃかっこよくて、あ〜わたしも使いたい〜と、今そんな状態です。笑

和紙で仕上げられているご自宅の床にも素足で上がらせてもらいました。長年の艶がついてスルスルした感触、とても気持ちよかったな〜。
こんなに気楽に踏めて足触りのよい和紙、はじめての体験でした。