「食」と「卓」

- 「食」と「卓」

1日限りの食卓。
季節といなり豆椿」の細井久美子さんとの協働。
(「ひびとひとびとの感謝祭」にて。場所:ikke 2021年10月 )
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私は、「あ、きれいだな」「面白いな」と、日常の暮らしにある何気ないものからヒントを得て、設計をすることが度々あります。
今回のきっかけは、アルミホイルのかけらで手遊びをしていたときに、光が反射してきれいだった瞬間です。
アルミホイルは身近にあり見慣れたモノで、とくに気にとめられず、ただの消耗品としての扱われ、だけど素材としては無垢の金属。
そしてその薄さゆえ、特別な工具がなくても自分の手ひとつで簡単に扱える素材。
そんなところに魅力を感じ、食事を楽しんでもらう場をこの素材でつくる実験的な試みです。

家庭用のアルミホイルをくしゃくしゃと揉み込み、広げて延ばし、また揉み込み、延ばし、を何度も繰り返します。
そのうちにアルミホイルの表面は肌理細かくなり、ギラギラと強く反射していた光は徐々に微細な乱反射に変わり、優しい表情となります。
また、手で触れると金属の冷たさではなく布のような柔らかな感触もあります。これは意外な発見でした。

初めての試みのため、イメージどおりにいかない問題点にも直面しました。
厚み11μmのアルミは、揉んでいるうちに穴が空いたり破れたりしていきます。
それはそれで良いと思えば、程度によって不格好に見える箇所もあります。
不格好に見える箇所には端材を四角にカットして継当てをしました。
出来上がりは最初のイメージとは少し違うものとなりましたが、それも面白い表情となります。

建築の現場でも似たような場面はたくさんあり、その都度デザインも変えていくのですが、そんなやりとりを経ながら出来上がっていくのがこの仕事の面白さです。
敷地条件、建主の意向、予算、工期、施工、、与えられた条件の中で何をどうデザインするか。
スケールは違ってもデザインのプロセスや思考は同じです。

ふだん見慣れて気にとめていなかったものが新しい景色に見える、そんな場の表現です。

完成サイズ:1800mm×900mm×2枚
材料:家庭用アルミホイル25cm幅×22m、金属用ボンド、制作時間

当日は、この「卓」に呼応して細井さんが考案してくださった汁粉がふるまわれました。
色の濃淡の中に食感や味で変化を楽しんでもらう葡萄の汁粉です。

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